【コラム】NBA復帰を目指すアイザイア・トーマスの展望

    NBA屈指のスコアリングガードとしてオールスターにも選出されたアイザイア・トーマスは、ボストン・セルティクスを離れて以降、NBAでローテーションに定着できない状況が続いている。

    NBAという舞台への復帰を目指すアイザイア・トーマスの今後の展望について考察していきたい。

    目次

    プロアマリーグで81点の大爆発で実力を示す

    アイザイアは175cm/84kgという日本人の平均とさほど変わらない体型ながら、2016-17シーズンにはボストン・セルティックスで53点という大量得点を実現し、シーズン平均28.9点という成績でファンに大きなインパクトを残した。
    小柄な選手らしくスピードとボールハンドリングに長けており、高いシュート力とドライブで得点を積み重ねる。大柄の選手と接触しても負けないフィジカルの強さとボディバランスを持っており、これがアイザイアの強みだといえる。

    2021年8月上旬にシアトルで開催された「The Crawsover」というプロアマ混合のサマーリーグでもこの強みは発揮され、1試合81点という故コービー・ブライアントに次ぐ記録を残した。

    この前週には同じくプロアマ混合のサマーリーグ「Atlanta Entertainment Basketball League」に参加し、こちらでも1試合65点という成績を記録している。

    プロアマ混合リーグとはいえ、「The Crawsover」や「Atlanta Entertainment Basketball League」といった実力者揃いのサマーリーグで圧倒的な得点力を残したことは、依然としてアイザイアの得点力がNBAでも通じるということを示し、SNSを中心に大きな話題となった。

    アイザイア・トーマスがNBA復帰できない理由

    サマーリーグで結果を残しているアイザイアだが、NBAチームが獲得するにはいくつかの懸念事項がある。

    年齢と怪我

    直接的な懸念点として挙げられるのが、年齢と怪我のリスクだ。
    今年32歳となるアイザイアはキャリアの全盛期を過ぎつつあり、2017年以降怪我が頻発している。クリーブランド・キャバリアーズへ移籍した2017年には股関節の負傷でシーズンの多くを欠場し、翌2018年3月には右臀部の手術により残りの試合を欠場した。また、2019-20シーズン開幕前には左手親指の外側側副靭帯を断裂した。特に2017年の股関節の怪我については2020年に手術を受けている。

    フィジカル面で負担がかかるアイザイアのプレースタイルは、年齢を重ねるにつれて身体への負荷が蓄積していく。これは低身長のフィニッシャーが向上的に抱えているリスクだ。身体的衰えが出始める年齢を加味すると、身体への負担はこれまで以上にリスクを伴うことになりそうだ。

    ディフェンス力

    小柄ながらNBA屈指のオフェンス力を持つトーマスの弱点の1つがディフェンスだ。
    実際にデンバー・ナゲッツやワシントン・ウィザーズではディフェンス面の懸念から、チームのローテーションから外されることも珍しくなかった。

    「ディフェンスは意識の問題が大きい」といわれるが、アイザイアの場合は体格面で常にミスマッチになることは否めない。プレーエリアが広がっている現代のNBAではペリメーターのディフェンスがより重要になっており、守備で穴になるアイザイアを安定的に起用することは難しい。

    セルティクス時代はこの弱点を圧倒的なオフェンス力で補っていた訳だが、上記のオフェンス力に陰りが見えてきていることから、ローテーションでの起用はかなりシビアになるだろう。

    PGの人材過多

    現代のNBAは、歴史上類を見ないほどPGの人材が豊富だ。
    チームのエースがPGということも珍しくなく、2021年ドラフトもケイド・カニングハムやジェイレン・サッグスに代表されるようにPGが豊作だ。従来はプレーメイクが主軸だったが、現代のPGはよりオールラウンダーになってきており、レブロン・ジェームズやベン・シモンズに代表されるように「ポジションレスバスケ」の影響を大きく受けているポジションだと言える。

    アイザイアはゲームコントロールに長けている選手ではなく、スコアリング能力こそが彼をオールスター選手に引き上げた武器というのは間違いない。2019-20シーズンにおいても、平均12.2点、3.7アシスト、FG成功率40.8%、3P成功率41.3%という及第点のスタッツを残しており、全盛期ほどではないにせよNBAレベルの得点力は証明したといえるだろう。

    しかし、実際に試合をみるとセルティクス時代であればスピードで抜ける場面でも、ディフェンスを崩しきれずにタフショットに持ち込まれる場面が散見されていた。特に股関節の怪我によって横方向の動きに全盛期のキレはない。また、セルティクス時代にはゴール下に切り込むプレーも珍しくなかったが、復帰後はゴール下のシュートが約9%となっている。
    そのため、全体的なプレーの質は低下しており、NBAレベルにおいてはオフェンス面でも衰えが見えてきているといえる。

    求められる役割

    多くのチームがPGを既に確保しており、選手層も厚いポジションであるため、開幕前にキャリア後半を迎えたアイザイアを積極的に求めるチームは多くはないだろう。
    レイジョン・ロンドがグリズリーズとのバイアウトと経てレイカーズと契約するまでは、レイカーズがアイザイアの獲得に動く最有力チームと見られていた。しかし、ベテランPGのロンドと契約したことでアイザイア獲得はかなり後退したと考えられるだろう。

    アイザイアがNBA復帰を目指す場合、彼に求められる役割はチームの3番手PGとして彼の経験とベンチからの得点力だ。
    プレーオフを目指す若いチームや、シーズン開幕後に怪我人が続発したチームがバックアップPGとしてアイザイアに白羽の矢を立てる可能性はあるだろう。ここでは、アイザイア獲得に動くかもしれないチームを3つ紹介したいと思う。

    候補1:ヒューストン・ロケッツ(可能性:☆☆)

    ロケッツには元オールスター選手のジョン・ウォールが在籍しており、ウォールがゲームメイクに徹すれば若手スター候補のケビン・ポーターJr.やジェイレン・グリーンらを揃えたロスターは面白い存在となる。しかし、ウォールは再建中のロケッツからの移籍を希望していると噂されており、超高額契約も終わりが見えてきたことからシーズン前半でトレードされる可能性は低くない。

    ウォールがトレードされた場合、ロケッツは若手PGの獲得に動くだろう。
    NBA経験3年以内の若手選手が多く、少し尖った若手スコアラーが多いロケッツにとって、ロッカールームやベンチで常に声を出してチームを鼓舞するアイザイアのようなベテランの価値は非常に大きい。ウォールの動向次第ではあるが、ベンチの得点源&若手の指南役としてアイザイアに声を掛ける可能性はありそうだ。

    候補2:マイアミ・ヒート(可能性:☆☆)

    大幅な戦力強化に成功し、優勝候補の一角と目されているヒートもアイザイアの所属先候補に挙げられる。
    ヒートは今オフにラプターズからカイル・ラウリーを獲得したが、ラウリーのバックアップPGは2wayから昇格したケイブ・ヴィンセントだけだ。ヴィクター・オラディポをPGにコンバートすることもできるが、プレースタイルや怪我の状況を考えると彼をPGで起用する可能性は高くないだろう。そうなると現時点では正規のPGはラウリーとヴィンセントだけであり、何かしらの補強は必要になるだろう。

    ヒートであればペリメーターディフェンスに定評があるオラディポと併用することができ、アイザイアの弱点であるディフェンスをある程度カバーすることができそうだ。懸念点としてはラウリーもキャリア終盤を迎えており、ヒートとしては若手PGの獲得が第1希望になるのは間違いないだろう。それでも、3番手/4番手のPGとしてアイザイアに声を掛ける可能性はありそうだ。

    候補3:ミルウォーキー・バックス(可能性:☆☆☆)

    2020−21シーズンのチャンピオンであるミルウォーキー・バックスも候補に挙げられる。
    チーム状況はヒートと似ているが、バックスにはドリュー・ホリデーとジョージ・ヒルというディフェンスに定評があるベテランPGが所属している。2人とも実績は申し分なく、特にホリデーはC以外の4ポジションを守ることができる現役屈指のディフェンダーだ。オフシーズンにはフィジカルなディフェンスを得意とするグレイソン・アレンを獲得し、怪我で欠場中のドンテ・ディヴィンチェンゾも復帰する。アイザイアのディフェンスをカバーするには十分な人材を有している。

    ヒートと比べればよりPGが充実しており、十分なプレー時間を確保することは簡単なことではない。しかし、逆にいうとアイザイアに大きな期待をする必要はなく、彼のディフェンスをカバーできる戦力を持っているバックスが3人目のPGとしてアイザイア獲得を検討する可能性はあるだろう。


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