【コラム】アンドリュー・ウィギンズは、ウォリアーズ復活の鍵となれるか

    過去5年間に渡って王朝を築いたゴールデンステイト・ウォリアーズは転機を迎えている。2018-19シーズンはファイナルに駒を進めたウォリアーズだったが、2019−20シーズンはリーグ最下位に甘んじている。

    稀代のスコアラーであるケビン・デュラントは移籍し、縁の下の力持ちとしてチームを支えたアンドレ・イグダーラもチームを離れた。クレイ・トンプソンは左膝前十字靭帯の断裂でシーズンを全休し、エースのでステフィン・カリーはシーズン最序盤に骨折で欠場を余儀なくされた。長期王朝を築いたことによる心身の負担は大きく、唯一出場を続けたドレイモンド・グリーンも満身創痍の状態だ。

    オフシーズンに、昨年ブレイクしたディアンジェロ・ラッセルをデュラントとのトレードで獲得した。ラッセルは平均32.1分の出場で23.6点、6.2アシストと個人としては及第点の数字を残しているが、チームを勝利に導くことはできなかった。

    開幕前からカリー、トンプソン、ラッセルのラインナップには疑問の声が少なくなかったが、カリー復帰後の噛み合いも良かったとは言い難い。ラッセルだけの責任とは言えないが、ラッセル出場時のNETRTG(ネットレーティング)が-10.3となっており、チームを牽引する活躍はできなかったといえる。また、ORTG(オフェンスレーティング)で30位、DRTG(ディフェンスレーティング)で28位と、チームが噛み合っていないことは明らかだった。

    目次

    2019-20シーズン成績から見る変化

    ウォリアーズは2月のトレードデッドライン直前にラッセルをトレードで放出した。ラッセルの放出でウォリアーズが得たものは、2014年ドラフト1位でNBA入りを果たしたアンドリュー・ウィギンズと2021年ドラフト1巡目&2巡目指名権だ。

    ウィギンズも25歳とこれから全盛期を迎えるであろう選手であり、上手くフィットすれば将来のコアになり得る。ウィギンズは時折、目をみはるプレーを披露し、当たりだすと止まらないが、そのパフォーマンスを維持することができず、NBA入りして以来「未完の大器」との評価が定着している。

    2018-19シーズンまでのキャリア平均は19.4点、2.2アシスト、4.3リバウンドとまずまずの成績は残しているが、強豪とはいえないウルブズのエース格として期待された選手のスタッツとしては物足りない。FG成功率こそ44.0%を残しているが、3P成功率は33.2%とウイングの選手としては厳しい数字となっている。問題なのはウィギンズの個人成績が、ルーキーシーズンから6年間でほとんど変化がないことだ。これが彼の伸び代や、バスケットボールに対する姿勢に疑問を持たれている根底だろう。

    しかし、2019-20シーズン序盤のウィギンズのパフォーマンスは圧巻だった。11月は平均35.2分の出場で27.1点、4.1アシスト、5.3リバウンドの数字を残しており、FG成功率48.3%、3P成功率39.5%とエースの活躍を見せている。12月以降に元のパフォーマンスに戻るが、シーズン序盤の活躍により、少なくともポテンシャルは未だ一流レベルであることを証明したといえるだろう。

    では、ウォリアーズ移籍後の数字を比較してみよう。チーム状況によって変化するレーティング等は除いた数字は下記の通りだ。

          ウォリアーズ移籍前  ウォリアーズ移籍後 
    MIN34.733.6
    PTS22.419.4
    FG%44.4%45.7%
    3P%33.1%33.9%
    REB5.24.6
    AST3.73.6
    BLK0.91.4
    TOV2.52.1
    AST RATIO13.615.4
    EFG%50.2%51.1%
    TS%53.5%54.2%
    PACE103.69102.69

    基本的にはウォリアーズ移籍前後で大きなスタッツの変化はない。目につくのはAST RATIOが1.8上昇しているということだ。カリーとは1試合しか共演できていない状態でアシストを伸ばせていることは期待できる。来期以降、カリーとトンプソンの稀代のシューター2人が復帰することで、ウィギンズのゲームメイク力が開花する可能性をみせた。得点効率を示すEFG%、TS%もともに向上しており、オフェンス効率がウルブズ時代よりも上がっているのが印象的だ。また、ブロックが平均で0.5も向上していることで、ディフェンス面での意識の向上が伺える。

    ティム・ハーダウェイの評価

    現役時代は5度のオールスター出場を果たしたティム・ハーダウェイはラジオ番組で、ウィギンズについて下記のように語っている。

    [He is] going to help out a lot and do a lot of things that people don’t think that he’s going to do.That was a great trade for the Warriors because Wiggins needed to come to a team where he’s third fiddle or fourth fiddle. He doesn’t want to be on a team [where] he’s one [or] two because that’s too much pressure on him. He just wants to play basketball and have fun, and have no pressure on him.

    https://www.nbcsports.com/bayarea/warriors/why-tim-hardaway-believes-andrew-wiggins-trade-was-great-warriors

    「(意訳)ウォリアーズにとって最高のトレードだった。ウィギンズ自身がチームの3番手や4番手でプレーできるチームを求めていたからウォリアーズはフィットすると思う。彼はプレッシャーを感じずに、バスケットボールを楽しみたいんだろう。」と語っているように、ハーダウェイは今回のトレードをかなり好意的に捉えているようだ。

    かつてウィギンズとの確執が伝えられたジミー・バトラーは、彼のプレーに対する姿勢に疑問を呈していた。ストイックな性格のバトラーにとって、ウィギンズのバスケットボールに対する姿勢は甘く見えたのだろう。これは見方を変えると、高いポテンシャルをもっていながら、ウィギンズはエースタイプの選手ではないことを示唆しているとも受け取れる。将来のエースとしてチームを引っ張ることはドラフト上位勢に課せられた使命かもしれないが、彼の性格にそれは合ってないのかもしれない。

    ウォリアーズのHCであるスティーブ・カーはウィギンズをチームの3rdオプションとして起用することを明言している。カーは元々ウィギンズに興味を持っており、デュラントやハリソン・バーンズのようにペリメーターと速攻での得点に期待していることいわれている。

    ウォリアーズにはカリー、トンプソン、グリーンとチームを牽引するコアが確立している。そのため直近でウィギンズがエースとしてチームを引っ張る必要はない。チームを牽引するという使命から解放されるウォリアーズに移籍したことで、ハーダウェイの言う通り、優秀な2番手3番手の選手として開花する可能性はある。

    ウィギンズの成功は、ウォリアーズの将来を担う

    ウォリアーズの屋台骨であるカリー、トンプソン、グリーンは30歳を超えており、近い将来に世代交代が確実に起こる。このことを考えると、25歳のウィギンズとドラフト指名権を確保できたことは非常に大きい。

    ウィギンズがオフシーズンにウルブスと結んだ2,750万ドルという高額契約は、現時点でのパフォーマンスに合わないものだ。ウィギンズのトレードがなかなか成立しなかった背景には、巨額の契約によって不良債権化することを恐れるチームが多かったためだ。2023年年まで残っているこの契約は、ウィギンズが不良債権化した場合は文字通りチーム再建の大きな足枷になる。

    カリーとトンプソンが怪我から復帰し、グリーンも身体的負荷から解放される2020-21シーズンはウォリアーズは再びプレーオフ戦線に戻ってくるだろう。ルーキーのエリック・パスカルはディフェンス面で頭角を現し、マーキーフ・クリスはインサイドで計算できる選手になりつつある。さらにリーグ最下位に低迷したことで、ドラフト上位指名権は確実だ。2020年ドラフトの目玉であるアンソニー・エドワーズに限らず、少なくとも才能あるルーキーを指名できる立場にいる。そこにウィギンズがチームの3番手として活躍できれば、優勝候補に返り咲く可能性もゼロではない。

    ウィギンズのペリメーターでのプレー向上と、今シーズン序盤に見せたゲームメイク力は、彼がウォリアーズにフィットするかの試金石になりそうだ。

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