【コラム】デリック・ローズ獲得したニックスの展望

    ニューヨーク・ニックスが、シーズンMVP獲得経験もあるデリック・ローズをトレードで獲得したと発表した。
    ローズ獲得の対価として、ニックスはデニス・スミスJr.(DSJ)と2021年ドラフト2巡目指名権をピストンズに放出した。DSJはアスレチックな攻撃型ガードだがトム・シボドーHCの起用に不満がありGリーグでのプレーを直訴していたこともあり、ニックスにとってはDSJは構想外だったといえるだろう。

    目次

    シボドーの戦術と若手の台頭

    2021年2月10日時点でのニックスの成績は11勝15敗でイースタン・カンファレンス9位とプレーオフ戦線に位置している。8位のホークスとは2ゲーム差となっており、プレーオフ進出の可能性は十分にあるといえる。シーズン前のニックスの評価は決して高いものではなく低迷が予想されていたことを考えると躍進といえる。

    ニックスの好調を支えている要因は2つある。

    1つ目はオフシーズンに招聘したトム・シボドーHCによる劇的なディフェンスの改善だ。
    昨年リーグ23位だったディフェンス・レーティングはリーグ6位まで跳ね上がっている。これを支えているのはジュリアス・ランドル、ミッチェル・ロビンソン、ナーレンズ・ノエルらのインサイド陣だ。特にランドルとロビンソンは2人でチーム全体の半数以上のリバウンドを獲得しており、リバウンド獲得数はリーグ6位となっている。まだシーズン序盤が終わったばかりではあるが、リバウンドに強くなっていることはシーズン終盤〜プレーオフに向けて明確な武器となるだろう。

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    2つ目は、若手選手の台頭だ。
    チームの大黒柱となっているリーグ7年目のランドルは平均22.3点、10.9リバウンドとオールスター級の数字を残している。また、ルーキーのオビ・トッピンとイマニュエル・クイックリーはオフェンス面で才能を発揮しており、チームに躍動感を生み出している。特にクイックリーは2020年ドラフト25位指名ながら平均11.8点、FG成功率40.2%、3P成功率35.8%、FT成功率93.4%を記録しており、好調ニックスを支える主力になっている。クイックリーは爆発力のあるのあるガードとして評価が急上昇中だ。

    また、2019年ドラフト3位指名のRJ・バレットも3Pシュートに難がありながらも、多彩な攻撃スキルで不動のSGとして起用されている。バレットはデューク大学時代にはザイオン・ウィリアムソンとチームメイトで、一時はザイオンを抑えて1位指名を受けるという予測もあったほどの潜在能力をもっているが、ルーキーシーズンは不発に終わっていた。シボドーHCは特定の選手を酷使する傾向があるが、デリック・ローズやジミー・バトラー同様にシボドーHCの起用が功を奏している状態といえるだろう。

    ニックスの課題と、デリック・ローズ獲得の目的

    ニックスのHCを務めているトム・シボドーはローズがMVPを獲得した時代のHCであり、後にミネソタ・ティンバーウルブズでHCを務めていた際にもローズを獲得するほど思い入れが強い。悪く言えばブルズ時代に固執しているともいえ、今回のローズ獲得にも少なからずシボドーHCの意向が反映されていると考えて間違いないだろう。

    久々に好調を維持しているニックスだが、プレーオフ進出を視野に入れると課題も少なくない。

    2019-20シーズンにリーグ26位だったオフェンス・レーティングは、今季はリーグ30位とさらに悪化している。シボドーHCが得意とするディフェンスはシステム的に構築できているが、オフェンスについては若手主体のチームゆえの単調さが表出している。オフェンス改善はニックスの目下の課題となっており、今季ベンチから平均14.2点、4.1アシストを記録しているローズ獲得は効果的な補強といえるだろう。

    また、フロントコートを中心にディフェンスは大きく向上しているが、エルフリッド・ペイトン、オースティン・リバース、RJ・バレットらのネット・レーティングは-6から-10となっており、バックコート陣のディフェンスは課題となっている。このことはニックスのアシスト数はリーグ29位なのに対して、対戦相手に許したアシスト数はリーグ4位となっていることからも伺える。

    こうしたバックコート陣の問題を解決できる人材としてニックスが白羽の矢を立てたのが、シボドーHCのかつての教え子であるローズだった。ローズはベンチからオフェンスを牽引し、自ら得点もアシストも行うことができる。また、ペリメーターでのディフェンスはリーグ平均よりも良く、特に6フィート以下でのDIFF%は-8.0と高いパフォーマンスを記録している。ローズはシボドーHCのシステムを熟知していることから、チームフィットするも比較的容易だろう。

    32歳のローズがニックスのエースとして起用されることは考えにくく、ピストンズやウルブズでそうであったようにチームの精神的支柱としてベンチから起爆剤として安定感を与えることができる。度重なる膝の大怪我によって文字通りのどん底から這い上がってきた経験と老獪なプレースキルは、若手主体のニックスの大きな助けになるだろう

    ローズ獲得によるニックスの展望とは

    ニックスは一斉を風靡した「ミラクル・ニックス」は20年以上前の出来事であり、大都市ゆえの知名度と金銭的余裕を背景に、不可解なトレードや人選を繰り返してきた。これがニックスが長年低迷している理由だ。
    こうした過去の悪癖から、人気・知名度ともにトップクラスのローズの獲得はニックス特有の人気選手集めと捉えられる側面もある。しかし、ニックスが抱えている課題を考えると、ローズ獲得は非常に理に叶った選択だっと考えられる。

    しかし、幾つかの懸念事項もある。

    ローズ獲得によって、ニックスはガード陣が人材過多に陥っている。
    PGにはクイックリー、エルフリッド・ペイトン、アレック・バークス、フランク・ニリキナが在籍しており、オースティン・リバースはコンボガードとして起用できる。極端なスモールラインナップにシボドーHCが舵をとるとは考えられず、ガード陣の整理は必須だろう。ローズも含めて多くの選手が来オフに契約満了となるためシーズン中に動くかは微妙なところだが、シボドーHCのお眼鏡に叶うウイングの選手を獲得したいところだ。

    また、起用方法も未知数だ。
    シボドーHCは特定のプレーヤーの出場時間が多くなりがちで、ローズを重宝するあまり若手の成長を阻害してしまうことも考えられる。ローズと同ポジションのクイックリーはバックコートの貴重な得点源として十分に機能しており、これから重要なプレーヤーになることが期待される。タイプが異なる選手であるため併用される時間もあるだろうが、クイックリーの成長を阻害しない起用は重要だ。

    ピストンズのセカンドユニットでオフェンスを牽引してきてローズの獲得は、ベンチから安定感を与えることができる。ローズが試合コントロールし、アウトサイドのクイックリー、インサイドのトッピンという2ndユニットの布陣はハマれば非常に魅力的だ。現時点では優勝を狙える布陣とはいえないが、有望な若手が各ポジションに在籍しており、経験豊富なローズ獲得によってニックスは東の台風の目になる可能性が出てきたといっても過言ではないだろう。

    ローズの獲得によって、ニックスは「ゲームコントロールの向上」「若手のメンター」「オフェンスバリエーションの多様化」「ペリメーターでのディフェンス改善」といった多くの課題をまとめて解決するチャンスを得た。来オフにはサラリーが空くこともあり、ニックスの今後の動きには注目だ。

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