【コラム】好調に転じたウィザーズが目指すはプレーオフか?再建か?

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生え抜きのエースだったジョン・ウォールを放出し、MVP経験のあるラッセル・ウエストブルックを獲得して臨んだ2020−21シーズン。2021年3月現在で得点王レースを独走しているブラッドリー・ビールとウエストブルックのコンビは注目を集めたが2021年2月12日まで6勝17敗とイースタン最下位に低迷し、ビールは試合中にフラストレーションを隠さない状況が続いた。

しかし、2月14日からウィザーズは突如として勝ち始め、2月後半戦を7勝2敗という好成績で締めくくった。チームが5連勝を記録したのはまさに3年ぶりであり、イースタン12位まで浮上したことでプレーオフ圏内まで2.5ゲーム差にまで迫っている。

目次

ロスター変更が機能したウィザーズの快進撃

2月14日以降の試合でウィザーズが下した相手にはセルティクス、ナゲッツ、レイカーズ、ブレイザーズが含まれている。オールスター前の3月4日にはクリッパーズ相手に接戦をものにした。

チームの好調要因についてビールは、「ウエストブルックと中心になってチームミーティングを行ったことが功を奏した」とインタビューで応えており、ブルックスHCはミーティングで各選手が自分の役割を再確認したと述べている。
ブルックスHCはこのタイミングで、ギャリソン・マシューズとモリッツ・ヴァグナーを先発起用している。トーマス・ブライアントが今季全休で、ダービス・ベルターンスもリズムに乗れない中でマシューズとヴァグナーを起用したことで、結果的にチームの機動力が上がった。

ヴァグナーはブライアントほどのオフェンスの支配力はなく、ロペスほどの守備力もないが、2人よりも機動力があり、3Pシュートも打てることでウエストブルックやビールのためのスペースを空けることができる。ハッスルプレーも多く、スクリーンをかけてツーメンゲームを仕掛けることで、オフェンスバリエーションを広げることに成功している。

また、マシューズを先発SFとして抜擢した起用したことで、ルーキーのデニ・アヴディヤをベンチから起用できるようになった点も大きい。アヴディヤはルーキー離れした落ち着きとバスケットIQの高さを見せており、ボールハンドラーやゲームメイカーとしての起用ができる。彼の強みを活かすためには、ボール保持の時間が長いウエストブルックやビールとの相性が良いとはいえず、2ndチームで起用することでゲームメイクができるSFとして安定感をもたらすことができる。

ワグナーとマシューズの先発起用は苦し紛れの、意表をついたラインナップであるともいえる。しかし結果論ではあるが、ウエストブルック/ビール/八村のプレーエリアを考えると非常に理に叶ったラインナップともいえる。

八村のディフェンス面での貢献

2月14日の前と後でブルックスHCの戦術は大きく変わっていない。しかし、スクリーン1つとってもプレーが迷いなく実施できているのは大きな改善だ。これを示す1つの指標として3P成功率が今季全体ではリーグ28位なのに対し、2月15日からの10試合ではリーグ14位にまで上昇している。このことから以前のように無理したタフショットが減少していると考えることができる。

また、2019-20シーズンからチームの最大の課題となっているディフェンス面においてもリーグ27位から18位にまで改善が見られる。ディフェンス面については八村の貢献が大きく、先述のミーティングで八村は「1〜5番の全ポジションの選手をディフェンスする」と宣言したとブルックスHCが明かしている。

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2020−21シーズン全体
(34試合)
2021年2月15日以降
(10試合)
6フィート以内1.4-2.4
10フィート以内2.3-0.4
15フィート以上1.53.4
八村のDIFF%

八村がディフェンスした選手の平均得点との差分であるDIFF%だが、これをみると、2月15日以降にマッチアップした選手を3Pライン以内では平均以上に抑えていることが分かる。マッチアップ相手にはレブロン・ジェームズや、ポール・ジョージ不在中のカワイ・レナードが含まれていることを考えると及第点以上の成長といえるだろう。

15フィート以上は大きく数字を落としているが、これについてはチームのシステムに起因する部分と、八村の課題の部分の両方が考えられる。ディフェンスにおいて八村は横の動きに対応することを苦手にしており、スクリーンプレーへの対応に遅れる場面が目立つ。1on1では守りきれるが、チームオフェンスに対応していくにはまだ時間がかかりそうだ。それでもミーティング後の八村はクローズやハンズアップを積極的に行っており、間に合わなくてもプレッシャーを掛けていく姿勢を見せている。こうしたプレーは数字には現れにくいが非常に重要だ。

八村がガードやセンターにマッチアップする機会も増えており、ディフェンスに強みがある選手がいないウィザーズがプレーオフを狙うには八村の貢献は不可欠になる。事実、ディフェンスが向上したことでウィザーズの直近10試合のネットレーティングは+に転じている。

ウィザーズは再建に舵を切るべきか?

シーズン序盤は選手の欠場などによって噛み合わず、ブルックスHC解任やビール放出が頻繁に話題に上がっていたが、2月14日以降の快進撃によってこうした主張は鳴りを潜めている。しかし、ウィザーズは近い将来に現在のチーム方針を維持するか、再建に舵を切るかを判断する必要がある。

また、シーズン序盤よりは改善傾向にあるものの、ウエストブルックとビールの個人技に頼ったオフェンスも少なくなく、1試合の中で大量得点することもあればクォーターで10点台ということもある。これについてはブルックスHCの戦術面での脆弱さが指摘されることもあるが、ディフェンスがより激しくなるプレーオフを勝ち抜くことは難しいかもしれない。プレーオフを逃すことになれば、全盛期を迎えているビールがトレードを志願しても不思議ではなく、その場合はチームは再建に舵を切ることになる。

チームが再建に舵取りをするのであれば、八村、アブディヤ、ブライアントらが目下の中心選手となると考えられるが、いずれの選手もチームを勝たせることができる選手かはまだ未知数だ。再建するのであればビールに代わるスター候補を獲得する必要があり、早くても5年程度は低迷を覚悟する必要があるだろう。

エースのビールは全盛期を迎えており、彼が全盛期である3〜4年のうちに優勝を狙えるチームになるのがウィザーズにとっての最高のシナリオだ。ビール、ウエストブルック、八村の契約はいずれも最長で2022-23シーズンまで契約が残っており、ビールが解体を望まない限りはチームのトップ3選手を保持することが可能だ。マシューズとワグナーの先発起用が好循環をもたらしたように、現体制で光が見えたのが2月の最大の成果だといえるだろう。

チームが好調に転じたことでウィザーズが2020-21シーズン中に動く可能性は低くなったが、ビールの全盛期中に優勝を視野に入れるためにはコーチ陣の変更も含めて、チーム体制の変更は多かれ少なかれ必要になる。ウィザーズにとって決断の時は迫ってきている。

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