【コラム】昇り始めた太陽、フェニックス・サンズの躍進

    リーグ有数のスコアラーであるデビン・ブッカーを擁しながら、10年に渡ってプレーオフから遠ざかっているフェニックス・サンズ。ここ3年間はウェスタン最下位という不名誉な成績を残し、バブルへもウェスタン最後の枠で滑り込んだチームは、周囲の予想と反して大きく躍動している。

    エースのブッカーを中心に、チーム全体が躍動したサンズは5試合終えた時点でバブル参加チームで唯一負けなしの成績を残している。2015-16年シーズンにNBA入りしたブッカーはNBAで初の5連勝を飾り、約10年ぶりのプレーオフ進出が近づいてきている。

    目次

    要因1:ブリジッズとジョンソンの活躍

    サンズの好調要因はいくつか挙げられるが、その中でも注目されているのはミカル・ブリッジズとキャメロン・ジョンソンの活躍だ。

    ブリッジズは2018年ドラフト10位でNBA入りし、典型的な3&Dとして評価を受けていた。バブル以降に大きく評価をあげているが、スタッツ上では大きな変化は見られない。むしろ、FG成功率、3P成功率ともに大きく後退している状態だ。

    スタッツ表で目立つのは+/ −が約3倍に伸び、ネットレーティングも約2倍になっている点だ。ブリッジズのネットレーティングをみてみると、勝利試合では10.3、負けた試合では-5.7となっており、ブリッジズがサンズの勝敗に大きな影響を与えていることが分かる。シーズン再開後のブリッジズはシュート成功率を大きく落としており、平均点もそれほど変化がない。このことから主力へと成長したブリッジズへのマークが厳しくなっていることが伺え、オフェンス面では苦戦しているといえるだろう。しかし、それでもネットレーティングが向上していくことから、ディフェンス面での貢献度が大きくなっているといえる。

           シーズン全体  シーズン再開後
    PTS8.79.2
    FG%50.4%39.5%
    3P%33.9%22.2%
    REB4.04.2
    AST1.81.8
    STL1.41.2
    +/-0.93.0
    NETRTG1.93.9
    ミカル・ブリッジズのスタッツ比較

    2019年ドラフト11位のキャメロン・ジョンソンは、3Pシュートが評価されていたが、モックドラフトでは1巡目後半指名が予想されていたことからも期待値は高くなかった。しかし、シーズン中断中にフィジカルを強化したことでPFでプレーすることができるようになり、出場機会を大きく伸ばしている。

           シーズン全体  シーズン再開後
    PTS8.613.4
    FG%42.9%50.0%
    3P%39.5%37.0%
    REB3.37.4
    AST1.22.2
    STL0.60.8
    +/--0.410.4
    NETRTG-0.314.1
    キャメロン・ジョンソンのスタッツ比較

    ジョンソンのスタッツには、彼の成長度合いが大きく表れている。

    得点とリバウンドを大きく伸ばしているが、これは出場時間や起用方法による部分も影響している。それでも得意の3P成功率が37.0%と及第点の数字を残しており、ストレッチ4として機能していることが伺える。また、ブリッジズ同様に+/ −とネットレーティングを大きく伸ばしているが、ブリッジズと比べてもより大きな差となっている。大学で4年間過ごしたことからもマインド面は既に確立しており、ディフェンス面での成長を感じさせる。

    ブリッジズと合わせて、2人の若手3&Dが主にディフェンス面で大きくステップアップしたことがサンズ好調の大きな要因といって良いだろう。

    要因2:キャメロン・ペインらサポートメンバーの躍進

    ブリッジズとジョンソンの成長が注目を集めがちであるが、忘れてはいけないのはキャメロン・ペインやジェボン・カーターといったNBA当落線上にいた選手たちが、大きく飛躍しているという事実だ。

    特にペインは2015年ドラフト14位でNBA入りを果たしたが、4年間で3チームを渡り歩いていた。バブル参加が決まった6月30日にサンズと契約することになり、現在のサンズではセカンドユニットの貴重な得点源となっている。

           キャリア成績  シーズン再開後
    MIN16.220.3
    PTS6.110.2
    FG%40.2%50.0%
    3P%33.8%50.0%
    REB1.83.6
    AST2.52.8
    STL0.71.0
    キャメロン・ペインのスタッツ

    中途半端と評されたシュート力とゲームメイク力が開花した要因として、サンズはロスターの役割が比較的はっきりしているということと関係していると考えられる。また、ブッカー、ブリッジズ、ジョンソンは若く、ペインが得意とするアップテンポなオフェンス展開にマッチする。

    先発PGを務めるリッキー・ルビオのゲームメイク力は世界最高峰だが、セカンドユニットのPGはサンズの課題となっていた。またルビオの弱点であるシュート力を、ペインがセカンドユニットからカバーすることができる。ペインはゲームメイクも苦手というわけではなく、先発メンバーを休ませている時間に安定したプレーができるようになったことがサンズに安定感をもたらしている。このことは、ペインの+/−が6.0という点にも現れている。

    また、昨年は渡邊雄太とGリーグでプレーしたジェボン・カーターも効果的な働きをしている。元来ディフェンスに定評がある選手ではあったが、再開後シーズンでは1試合平均2本の3Pシュートを47.6%の高確率で決めている。こうした埋もれていたメンバーが効果的な働きをしていることは、サンズの躍進に大きく影響している。

    プレーオフに進出できれば、台風の目になり得る

    ここまで見てきたようにブリッジズ、ジョンソンの若手ウイングプレーヤーの成長、ペインやカーターといった伏兵の活躍がサンズ好調の要因として挙げられる。それに加えて大黒柱であるブッカーは平均29.4点を挙げており、当たったら止まらない爆発力は健在だ。ルビオとエイトンは少々大人しい成績ではあるが、それでも期待されている役割を果たしているという点では合格点を与えられる。

    再開後シーズンで特に目立つのは、昨年29位だったディフェンス面の向上だ。前述の通り、ブリッジズ、ジョンソン、カーターらのディフェンス面での貢献が大きいが、その背景にあるのはモンティ・ウィリアムズHCの考え方があるだろう。

    ウィリアムズHCは守備重視のシステムを大事にするスタイルのコーチであり、スパーズのグレッグ・ポポビッチHCの元で経験を積んだ堅実な采配を持ち味とする。昨年までのサンズは個人技に頼るプレーが目立っていたが、ウィリアムズHCの規律とディフェンス意識がチームに植え付けられてきた可能性が高い。オフェンス面ではアウトサイドのブッカー、インサイドのエイトンと核があり、その周辺をディフェンス面で安定した役割を果たせる選手で固めるという思想は今のサンズに合っている。

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    サンズがプレーオフに出場することができれば、ケリー・ウーブレJrとアーロン・ベインズが戻ってくる可能性が高い。

    ウーブレはブリッジズ、ジョンソンと併用するかなどラインナップ編成を考える必要があるが、得点力の高いウーブレが戻ってくればサンズのXファクターになりえる。個人的にはうまく機能しているディフェンス主体の現ラインナップは変えずに、ウーブレをベンチから6thマンとして起用するのは、他チームにとって脅威になり得るのではないかと思う。

    また、ゴール下でテクニカルなブルーカラーなプレーができるアーロン・ベインズは、インサイドに柔軟性をもたらすことができる。ディフェンス型の選手であり、セカンドユニットにさらなる安定感を持たせることができるだろう。ブレイザーズが試して一定の成果をみせたハッサン・ホワイトサイドとユスフ・ヌルキッチの併用と同じように、状況に応じてはエイトンとの併用の可能性も考えられる。

    現在のサンズは、バブルでもっとも勢いのあるチームであり、この勢いのままプレーオフ進出を果たすことができれば今プレーオフのダークホースになる。今シーズン、プレーオフに進めなかったとしても、ウィリアムズHCの掲げるディフェンシブ戦略とブッカーの得点力は来季以降もリーグを驚かせる可能性を秘めているだろう。

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