【コラム】2018-19シーズンMVP、ヤニス・アデトクンボはGSWに移籍する?

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2018-19シーズンMVPであり、2020年現在もっともアンストッパブルな選手の1人であるヤニス・アデトクンボは2021-22オフシーズンに完全FAとなる。

まだ24歳ということで全盛期は数年後であり、荒削りな部分を技術でカバーできるようになると、今以上に止めることは難しくなる。実績・将来性の両面でヤニスにはスーパーMAX契約の価値があり、完全FAとなれば多くのチームがスーパーMAX契約を提示するだろう。

目次

再燃するウォリアーズへの移籍の噂

2018−19シーズンにゴールデンステイト・ウォリアーズのステフィン・カリーが、ヤニスをウォリアーズに誘ったと話題になった。

ウォリアーズは今季はリーグ最下位に沈んでいるが、その要因はカリーとクレイ・トンプソンの怪我による部分が大きく、カリーとクレイが戻ってくる2020−21シーズンには改めて優勝争いに食い込んでくることが予想される。そのラストピースとして、ヤニスを本気で獲得しようとしても不思議なことではない。

事実、ウォリアーズは過去にNBAトッププレーヤーの1人で、ライバルチームのエースだったケビン・デュラントを獲得したという実績がある。

バックスは、オールスター選手であるクリス・ミドルトンとの高額契約、ヤニスの実兄であるタナシス・アデトクンボとの契約など、バックスはヤニスとの再契約のために必死で周りを固めてきた。これはスモールマーケットであるバックスにとって、ヤニスに出て行かれることはチームの解体を意味するためだ。正直なところ、ヤニスとの再契約が前提になければミドルトンやタナシスとの契約はチームにとって適正価格とは言い難い。ミドルトンがいい選手なのは間違いないが、ヤニスの突破力があってこそ活きるタイプの選手であり、チームを将来的に任せられる選手かといわれると疑問だ。また、ロペス兄弟をはじめ、勝てるチームメーンバーを持てるすべての駒を使って集めてきたことも、すべてはヤニス中心のチーム構築と再契約のためといえる。

現時点はバックスの動き、チームの勝敗ともにヤニスに満足してもらえるように動いている。しかし、チームが思ったように勝てなければヤニスが痺れを切らして再契約を拒否するという可能性もある。そうした場合、ウォリアーズは有力な移籍先になりえる。

ウォリアーズの変化

2019−20シーズンのウォリアーズはリーグ最下位に低迷しているが、これはカリーとクレイの怪我によるところが大きい。長期王朝の副作用で心身ともに疲労が溜まっていたということもあり、今季はチーム全体のロードマネジメントという見方もある。
しかし今季のウォリアーズは、これまでとは違う動きも見せている。

まず、ケビン・デュラントがブルックリン・ネッツに移籍したことで、ウォリアーズはスーパーチームではなくなったことだ。

たしかにデュラントの獲得には賛否があり、「デュラントがいないウォリアーズの方が強い」という意見も少なくない。しかし、デュラント在籍時のウォリアーズが歴代屈指の強豪であることには間違いない。また、6thマンとしてチームに欠かせない存在だったアンドレ・イグダーラを放出した。これにより、カリーとクレイが健康だったとしても明らかにフロントコートは弱体化したといえる。

2019−20オフシーズンに獲得したばかりの成長中のディアンジェロ・ラッセルを放出して、ウルブズで不満分子となっていたアンドリュー・ウィギンズを獲得したことも、この穴埋めがチームの優先事項だったことに端を発していると思われる。ラッセルは優れたスコアリングPGであるが、カリーやクレイとポジションが重なることに加えて、決して相性が良いプレースタイルとは言い難い。

一方のウィギンズは意識の問題こそあれ、潜在能力は折り紙付きで、カリーやクレイに次ぐSFと考えると悪い選択肢ではない。事実、ウィギンズはウォリアーズに移籍後に、平均19.4得点、4.6リバウンド、3.6アシストと及第点の成績を残している。チームのエースとしては頼りないが、2ndオプション/3rdオプションとしては有効だ。

また、若手のケボン・ルーニーやアルフォンゾ・マッキニーを起用する時間も増えており、チームは緩やかな世代交代を行おうとしている。カリー、クレイ、グリーンといった王朝を支えたスター選手は30代となり、次の核を探す必要に迫られている。

仮にウォリアーズがヤニス獲得に成功すれば、契約時に26歳ということもあり、カリー時代からヤニス時代にスムーズに移行することができるかもしれない。これが、チームとして考えうるベストシナリオだろう。

ヤニスはウォリアーズにフィットするか?

ウォリアーズがヤニスを獲得した場合、当然ヤニスが1stオプションとなる。

これは言うは易しという部分があって、現在のカリーとクレイ中心に作られているチームシステムからの脱却は想像以上に難しいだろう。これはカリー攻撃の起点がカリーから始まることで成り立っているシステムだからだ。

「デュラントがいても機能した」という意見もあるが、デュラントはコートのどこからでも得点できる圧倒的なスキルがある。自分でフィニッシュに持ち込むこともできれば、1on1で簡単にミドルショットを決めることも、キャッチ&シュートで3Pシュートを沈めることもできる。だからこそウォリアーズは1stオプションがカリー、2ndオプションでクレイとデュラントを使い分けるという形で成功できた。

ヤニスの場合はデュラントとは少し状況が異なる。

現時点でヤニスがアンストッパブルな選手であることに議論の余地はないが、オフェンスバリエーションは発展途上だ。3Pシュートは2019-20シーズンに数字を伸ばしているが得意とはいい難く、ウォリアーズのオフェンスシステムに組み込んむことを考えるとウィークポイントになりえるレベルだ。また、ペイントエリア内でダブルチーム/トリプルチームを受ける場面も多いが、そこら周りを活かす技術はない。苦し紛れのキックアウトパスが1試合中に何度もあるのが実状だ。突破力が群を抜いているため数字には反映されにくいが、攻撃起点としてヤニスを考えた場合、完全に対処できないかというとそこまでの支配力はないと思う。ヤニスに合わせられるミドルトンやジョージ・ヒルといったベテラン勢がいるからバックスは強いのだ。

ヤニスが完全FAとなる2021-22シーズンにはカリーとクレイは年齢的には全盛期を過ぎており、ヤニスを起点としたシステムに移行することになる。これが上手く機能するかが現時点では未知数だ。カリーとクレイは、プレースタイルを考えると長く活躍できるだろうし、ヤニスが激しいマークを引きつけた際に今と変わらず長距離砲を沈めるだろう。しかし、これにはヤニスの判断力がキモになる。現状のヤニスのプレースタイルを考えると、噛み合わせには疑問が残る。

ヤニス移籍の現実味

ウォリアーズがヤニスを獲得するためには、先述のシステム面以外にも幾つかの課題が存在する。

まずはサラリーキャップだ。ウォリアーズはカリー、クレイ、グリーンと高額契約を結んでおり、トレードデッドラインで獲得したウィギンズもMAX契約だ。ヤニスを獲得するためには、この4人のうち複数名を放出する必要がある。

まず候補に挙がるのはプレーエリアの被るウィギンズとグリーンだ。ウィギンズは現時点ではヤニスの下位互換ともいえるが、ウォリアーズで開花の兆しを見せているということもあり、彼が来シーズン活躍すると難しい決断を迫られることになる。

また、ドレイモンド・グリーンの放出はディフェンス面で大きな痛手となりうる。彼の評価は非常に難しく、単体でみるとエリートな選手ではない。しかし、カリーやクレイといったチームの1stオプションや2ndオプションを支える役目としてはこれ以上ない重要な役割を担っている。特にウォリアーズのシステムとの相性がよく、ヤニス中心のシステムになった時に、彼がこれまでのパフォーマンスを維持できるかと問われるとかなり厳しいような気がする。加えて、6thマンとして攻守の安定剤をになっていたアンドレ・イグダーラが2019-20オフシーズンにチームを離れた。ファイナルMVPにも輝いたイグダーラの役目も非常に大きく、特にディフェンス面での弱体化は避けられないだろう。カリーとクレイの年齢の問題もあり、ヤニスが王朝を築くためにウォリアーズに移籍するのであれば、簡単にはいかないように思う。再構築に近い形のチーム作りの必要がある。

「Heavy.com」はバックス首脳陣の言葉として、「ヤニスとの再契約が最優先事項だが、ウォリアーズのことは現時点では心配していない。今のところヤニスはミルウォーキーを去りたいという意思を見せていない。」と報じた。また、バックスのジョン・ホルストGMは「Fox Sports Wisconsin」で、「ヤニスに適した機会と環境を与えれば、彼はミルウォーキーを愛し、ウィスコンシン州を愛すと思う。彼は長い間バックスの一員になると思うよ。」と語った。

NBAの契約関連については毎年驚くような動きがあるため、額面通り受け取ることはできないが、バックスがヤニス残留に向けて最大限の努力をしていることは間違いない。また、ヤニス自身も大都市よりも地方都市に魅力を感じているということも報じられている。バックスが優勝を狙える布陣を用意し、チームが上位である限りは2021−22年にヤニスが移籍する可能性は高くはないだろう。

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