【コラム】PJ・タッカー争奪戦に勝利したバックスが見据えるプレーオフ

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ロケッツのスモールラインナップの象徴としてセンター起用されていたPJ・タッカーは2020-21シーズンの目玉選手の1人だ。身体を張ったブルーワークを厭わず、3&Dプレーヤーとして献身的なプレーでチームを支えるベテランプレーヤーの需要は高く、多くの強豪チームが獲得に名乗り出ていた。

トレードデッドライン直前の2021年3月20日にタッカーを獲得したのは2年連続シーズンMVPのヤニス・アデトクンボを擁し、東の覇権を狙うミルウォーキー・バックスだった。

目次

PJ・タッカーの獲得の狙い①:ディフェンスの向上

2020-21シーズンのバックスは、イースタン制覇のみならず、NBA優勝を視野に入れた積極的な補強を行っている。オフシーズンにはドリュー・ホリデーやボビー・ポーティスらを獲得し、昨シーズンからセカンドユニットを大幅に入れ替えた。懸案だったヤニスの再契約問題も終息し、26歳のヤニスが全盛期を迎える今後数年のうちに優勝したいというのがバックス首脳陣の本音だろう。

ここまでバックスのディフェンスはリーグ8位と少々見劣りする成績になっている。
この要因としては、対戦相手の3Pシュート成功率をリーグ23位に抑えているのに対し、2Pシュート成功率はワースト3位とリーグ下位に沈んでいることが挙げられる。これはホリデーやダンテ・ディビンチェンゾ擁するバックコートに比べて、フロントコートのディフェンスに課題があることを示している。

この問題を解決する人材として、機動力があって、フロントラインで複数ポジションを守ることができるタッカーは最適解になる可能性がある。また、タッカーをインサイドの守備に専念させることで、ホリデーをバックコートに専念させることができ、チーム全体のディフェンス・フォーメーションを向上させることができるだろう。

PJ・タッカーの獲得の狙い②:オフェンスでのスペーシング

タッカー獲得はオフェンス面でもバックスに恩恵を与える。

タッカーはロケッツ時代にはセンターとして起用され、スモールラインナップの象徴だった。得意のディフェンスでインサイドの守備を担いながら、3Pシュートも打てるタッカーは3&Dとして起用することができ、タッカーが3Pシュートを狙うことでヤニスのオフェンススペースを空けることができるだろう。これはヤニスとともにバックスの中核を担うクリス・ミドルトンの役割と近い。

また、バックスがタッカーを獲得したことによって、ヤニス・アデトクンボとタッカーのマッチアップを避けることができたことも間接的にバックスのオフェンス向上につながる。

タッカーは複数ポジションを守れるエースストッパーとしてカワイ・レナードやザイオン・ウィリアムソンなどの相手エースとマッチアップする機会も少なくない。その対戦相手にはヤニスも含まれており、バックス移籍時にはタッカーが「もう君(ヤニス)とマッチアップしなくて済むね」と話したと言われている。
タッカーはイースタンのチームへの移籍を希望していたということもあり、バックスとイースタン制覇を争うことになるであろうシクサーズやヒートがタッカー獲得に名乗りを挙げていた。シクサーズやヒートにとってタッカー獲得はヤニス対策としてベ有効な選択肢だったが、バックスがタッカーを獲得したことで同地区の競合のヤニス対策を後退させることができたといえるだろう。

タッカーはバックス優勝のラストピースか?

バックスの中核を担っているヤニスとミドルトンのオールスターデュオは、お互いの弱点を補完している存在といえる。ミドルトンは今年30歳だが、プレースタイル的にはあと数年はヤニスを助けることができるだろう。
彼らの脇を固める選手としてホリデーやブルック・ロペスが重要な役目を担っており、ここにディフェンス面で複数のポジションを守ることができるタッカーが加入することによって、ディフェンスのさらなる向上が見込める。

また、オフェンス面でもヤニスのプレースペースを阻害することなく、ヤニスを起点としたオフェンスのオプションとしての機能が期待される。機動力・フィジカル・経験を合わせ持ったタッカーは、バックスが優勝を見据える上で最適解に近い選択だったといえるだろう。

ただし、バッスク優勝にはまだ多くのハードルが残っている。
リーグNo.1センターになりつつあるジョエル・エンビード擁するシクサーズに対しては、パワーとサイズに勝エンビード対策をどこまでできるかは不明だ。また、バックコートのベン・シモンズとマティス・サイブルの2人は最優秀守備選手候補に名前が挙がるほどの選手であり、ヤニス対策は万全にしてくることが予想される。そのため、ヤニスの負担をどれぐらい軽減できるかは非常に重要なポイントになる。

また、ファイナルで対戦するであろうウェスタンのチームには、レイカーズのアンドレ・ドラモンド、ナゲッツのニコラ・ヨキッチといったリーグ屈指のビッグマンが所属している。シクサーズ同様に、彼らへの対策はバックスが優勝を成し遂げるためには避けては通れない課題だ。

バックスが優勝を目指すためにはタッカーの活躍が不可欠なのは間違いないが、35歳のタッカーへの負担は想像以上に大きなものになりそうだ。

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