「2025 NBA Draft」が日本時間2025年6月26日に開催されるが、NCAAトーナメントが終わり、ロッタリー抽選も終わったことで最終のモックドラフトが出てきている。
2025年のドラフト候補生は例年に比べて「豊作年」と言われており、1位指名が予想されているデューク大のクーパー・フラッグをはじめ、多くのスター候補生がドラフトされると言われている。
今回は「2025 NBA Draft」で1巡目指名が予想される選手を中心に、新人王争いに入りそうな5名をピックアップしたいと思う。
Mockサイトの1巡目指名予想
はじめに、代表的なモックドラフトサイトの2025年5月30日時点での1巡目予想をまとめたい。
順位 | チーム | NBADraft.net | Tankathon | The Ringer |
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1位 | Mavericks | Cooper Flagg | Cooper Flagg | Cooper Flagg |
2位 | Spurs | Dylan Harper | Dylan Harper | Dylan Harper |
3位 | 76ers | Ace Bailey | Ace Bailey | VJ Edgecombe |
4位 | Hornets | VJ Edgecombe | VJ Edgecombe | Tre Johnson |
5位 | Jazz | Kon Knueppel | Jeremiah Fears | Kon Knueppel |
6位 | Wizards | Jeremiah Fears | Tre Johnson | Ace Bailey |
7位 | Pelicans | Tre Johnson | Kon Knueppel | Carter Bryant |
8位 | Nets | Nolan Traore | Kasparas Jakucionis | Derik Queen |
9位 | Raptors | Egor Demin | Khaman Maluach | Khaman Maluach |
10位 | Rockets | Noa Essengue | Collin Murray-Boyles | Jeremiah Fears |
11位 | Blazers | Rasheer Fleming | Noa Essengue | Egor Demin |
12位 | Bulls | Derik Queen | Derik Queen | Kasparas Jakucionis |
13位 | Hawks | Nique Clifford | Asa Newell | Danny Wolf |
14位 | Spurs | Thomas Sorber | Carter Bryant | Nique Clifford |
15位 | Thunder | Will Riley | Jase Richardson | Cedric Coward |
16位 | Magic | Kasparas Jakucionis | Liam McNeeley | Thomas Sorber |
17位 | Wolves | Asa Newell | Nique Clifford | Noah Penda |
18位 | Wizards | Khaman Maluach | Egor Demin | Labaron Philon |
19位 | Nets | Joan Beringer | Thomas Sorber | Will Riley |
20位 | Heat | Drake Powell | Nolan Traore | Noa Essengue |
21位 | Jazz | Noah Penda | Will Riley | Drake Powell |
22位 | Hawks | Tahaad Pettiford | Joan Beringer | Rasheer Fleming |
23位 | Pacers | Yaxel Lendeborg | Danny Wolf | Nolan Traore |
24位 | Thunder | Tamar Bates | Rasheer Fleming | Jase Richardson |
25位 | Magic | Labaron Philon | Walter Clayton Jr. | Collin Murray-Boyles |
26位 | Nets | Cedric Coward | Noah Penda | Ben Saraf |
27位 | Nets | Liam McNeeley | Maxime Raynaud | Bogoljub Markovic |
28位 | Celtics | Walter Clayton | Ben Saraf | Liam McNeeley |
29位 | Suns | Carter Bryant | Kam Jones | Yaxel Lendeborg |
30位 | Clippers | Maxime Raynaud | Labaron Philon | Joan Beringer |
モックサイトによって多少の前後はあるが、1〜4位についてはほぼ固定になっている。
以前はTOP3が確実と言われていたラトガース大学でスコアラーとして活躍している18歳のエース・ベイリーの評価が、ここにきて下がってきていることぐらいが不確定性がある部分。評価が下落している要因としては素材型の選手である点が大きく、NBAでスターになるには時間がかかる可能性がある。
それでも6位指名まではほぼメンバーが固定されており、上位指名陣は1位指名が確実視されているクーパー・フラッグや、2位指名が確定しそうなディラン・ハーパーを中心に、各チームの状況に合わせて指名されていくだろう。
過去のドラフトをみてもTOP5までにドラフト指名された選手が新人王を獲得する確率が高いことから、ここら辺の順位で指名された選手が2026年の新人王を獲得する可能性が高い。
7位以下については、上位指名で誰が取られるかや、チームの目指している方向性や選手構成によって大きく変わってくることだろう。それでもロッタリーピック(16位まで)で指名される選手は少なくとも才能面ではNBAで通用すると評価されていることは間違いないため、所属するチーム状況によっては新人王級の活躍が期待されるだろう。
新人王争いで注目される5選手
1巡目指名されることが予想される選手のうち、新人王争いをしそうな選手を5人ピックアップして紹介する。
Cooper Flagg(クーパー・フラッグ)
デューク大でプレーするクーパー・フラッグは高校時代から注目を集めたビッグマンで、ディフェンス・プレイメイク・スコアリングのすべてを揃えている万能型フォワード。特にディフェンス面では206cmのサイズと機動力を活かして柔軟にスイッチディフェンスを実行可能で、バスケットボールIQも高いことからNBAでも即戦力の守備力があるとされている。ただし、フィジカル面ではまだ発展途上であり、NBAレベルのフィジカルに対応できるかがポイントとなりそうだ。とはいえ、2025年ドラフトでもっとも完成されていると評価されていることからも新人王争いでは最有力候補といえるだろう。
ただし、1位指名権をマーベリックスが獲得したことがマイナスに働く可能性もある。
新人王という観点ではスタッツ面も重要となるため、ルカ・ドンチッチを放出した対価として獲得したアンソニー・デイビスや、インサイドにはデリック・ライブリー2世といった若手有望株も揃っている。放出対象と噂されているがPJ・ワシントンやダニエル・ギャフォードもおり、スタッツ面が伸びるかは不透明。
また、”Mr. Everything”と呼ばれた往年の名選手ケビン・ガーネットやスコッティ・ピッペンと比較されているほど多才であるが、現状では飛び抜けた武器はなく、良くも悪くも「そつなくこなす」という側面が強い。順当に成長すればリーグを代表するビッグマンになる素材ではあるが、インサイドの層が厚いマーベリックスで1年目から突出した数字を残せるかというと疑問が残る。
マーベリックスは、怪我で出遅れるカイリー・アービングも在籍していることから十分に戦える戦力を有している一方で、怪我がちな選手も少なくないため、フラッグ中心のチームに再建する可能性も考えられる。そうなればフラッグが新人王を獲得するのに十分なスタッツを稼ぐことができ、プレーと数字の両面でインパクトのある1年目になるかもしれない。
Dylan Harper(ディラン・ハーパー)
ディラン・ハーパーは高校生時代には”5スター”リクルーティングの評価を受けた高いバスケットボールIQとパッシングセンスコンボガードで、トリプルダブルも狙えるオールラウンド性が注目されている。ブルズ黄金期を支えた父のロン・ハーパー同様にディフェンスでもサイズを活かしたスイッチディフェンスに対応でき、NBAのピック&ロールにもある程度順応することができるだろう。オフェンスについてもユーロステップやステップバックといった現代的なスキルを備えており、ボールハンドリングの安定性も高い。
能力的な懸念点としては走力は高くなく、アウトサイドシュートについては苦労する場面が出てくるかもしれない。ドラフト時にアウトサイドシュートが懸念されていたが1年目に開花した選手はそう多くなく、そういった選手はどちらかというと身体能力が高く、トランジションでアタックできる選手が多い。そういう意味ではハーパーはプレースタイルを選択することに遅かれ早かれなるかもしれない。
ハンドリングが安定しているハーパーは「ボールを預けられるPG」として起用できる素質があるが、2位指名権を獲得したスパーズには2025年の新人王であるステフォン・キャッスルが在籍している。仮にスパーズが予想通り2位指名権でハーパーを指名した場合はキャッスルとコンビを組むことになり、ハーパーとキャッスルを同時起用する2ハンドラー体制を敷くこととなる。これは2年連続でカンファレンス・ファイナルに進出したペイサーズと似た状況を作り出すことができ、スパーズには2024年の新人王であるビクター・ウェンバンヤマもいることから、中長期的には王朝を築く可能性さえあるが、新人王争いという観点でいうとキャッスルとボールシェアすることで数字・プレーの両面で苦戦するかもしれない。
Ace Bailey(エース・ベイリー)
ラトガース大でディラン・ハーパーとコンビを組むエース・ベイリーは、圧倒的な身体能力を活かしたスコアリング能力が特徴で、オフェンス面のポテンシャルは2025年ドラフトでも随一と言われている。特にトランジションでの爆発力があり、ディフェンス時のスイッチ対応もできるため、攻守両面でインパクトを残せる選手になる可能性がある。
その一方で、ポテンシャル型の選手ということが評価を下げる要因となっている。
身体能力が高く、シュートタッチも滑らかだが、フィジカル的にもスキル的にも完成されている部分が少なく、ハンドリングには大きな課題が残る。フィジカル面を強化することでディフェンスやリムアタックを強化できるが、その代償として柔軟さが失われる可能性もある。良くも悪くもポテンシャル型ゆえに如何様にでも変わる可能性がある。そういった意味で、2022年ドラフトで1位指名が噂されながらも3位に下がったジャバリ・スミスJr.のような評価を得ているともいえる。ジャバリ・スミスJr.は3年目の今季にはロケッツの躍進を支えた1人になっており、ベイリーも同じような成長曲線を辿る可能性もありそうだ。
3位指名権を持つシクサーズが彼を指名するかは微妙なところだが、エンビード体制下でシクサーズがコンテンダーを目指すのであれば控えでの育成が中心になる。その場合は新人王レースでは大きく後退する。逆にホーネッツやウィザーズといった再建チームに指名されるのであれば才能開花が促され、予想を覆す活躍をする可能性も捨て切れないだろう。
Tre Johnson(トレ・ジョンソン)
トレ・ジョンソンはテキサス大学でプレーするウイングの選手で、天性のスコアリング感性を持っていると評価されている。ショットクリエイション能力が高く、ミッドレンジや3Pシュートはもちろん、ドライブからのフィニッシュにも対応できるオフェンスの多様性を持っている。身長とウイングスパンがあり、再建チームで1年目から主力スコアラーとして活躍する可能性は比較的高い。1位指名が確実視されているクーパー・フラッグは再建とは言えないマーベリックスの指名が予想される。2位指名権を持つスパーズや3位指名権を持つシクサーズも既にチームのコアはできているが、SGでの純粋なスコアラーとして起用されればハマる可能性は十分にありそうだ。ジャズやウィザーズにはどうポジションにスコアリング力が高いベテラン選手が既に在籍しているが、彼らをトレードしてジョンソンをエーススコアラーに据えることも考えられる。こうした状況が生まれれば、ジョンソンが新人王を獲得する可能性は否定できない。
ただ、現状でいえばハンドリングやスピードでの適応が求められ、NBAレベルにおいてはNCAAで見せたようなオフェンス面での突破力はやや後退する可能性があり、ピーキーさによって成績に波が出ることも予想できる。ただ、オフェンス志向が強いため、新人王レースの候補になることは間違いなさそうだ。
VJ Edgecombe(VJ・エッジコム)
ベイラー大でプレーするVJ・エッジコムについてもトレ・ジョンソンと並ぶ2025年ドラフトの目玉SGで、ほぼ全てのモックサイトが上位指名を予想している。
もっとも評価されているのはディフェンスで、アスリート気質な面があり、爆発的な身体能力でインパクトのあるプレーをみせる。身体能力的には明らかにNBAレベルであり、バハマ代表として大舞台での経験もしていることからNBAへの適応も比較的早い可能性がある。
エッジコムは比較的ディフェンス寄りの選手であり、新人王を獲得したビクター・オラディポとも比較されている。マーベリックスとスパーズが順当にクーパー・フラッグとディロン・ハーパーを指名するのであれば、パフォーマンスが落ちてきているポール・ジョージの後釜として指名しても不識ではない。ポジション的には空いており、タイリース・マキシーやジョエル・エンビードというオールスター級の選手もいることからスペーシング面で優位が取れ、1年目から成績面でも貢献することも考えられる。しかし、純粋なスコアラーというよりは2-wayプレーヤーという側面が強く、エーススコアラーとして運用されるかは微妙なところだ。シクサーズのHCであるニック・ナースもラプターズ時代のような守備主体のチームのコアとしてエッジコムを起用するのであれば、チーム貢献は高いが個人成績はそこまで振るわないことも考えられる。シクサーズ以外だったとしても、次期エース候補としては同ポジションのトレ・ジョンソンの後塵をはいすることから5人の中では新人王候補からは比較的遠いのではないかと思う。
新人王予想
上位指名が予想される目玉選手を5名紹介したが、この中ではクーパー・フラッグがやはり能力的には一歩抜け出している。順当にいけばフラッグが新人候補の最右翼であることは間違いないが、プレーオフを目指す力があり、ビッグマンに有力選手が多いマーベリックスが1位指名を獲得したことがどう影響するのか微妙なところだ。
2位指名のスパーズが指名権をトレードしなかった場合はディラン・ハーパーが対抗馬となるが、今年の新人王であるステフォン・キャッスルとの調和が鍵となりそうだ。
また、純粋なスコアラーとして3位以下の指名が期待できるトレ・ジョンソンも数字的に新人王争いの有力候補になりそうだ。
エース・ベイリーについてはポテンシャル型という側面が強く、VJ・エッジコムはディフェンス志向が強いことを考えると、将来的にはコンテンダーチームの一角を担うことはあれども、強力なエース候補になりえる選手がいる2025年ドラフトの新人王候補としては一段階落ちるイメージだ。
こうした点から私の予想としては、下記としたい。
本命:ディラン・ハーパー
対抗:クーパー・フラッグ
穴 :トレ・ジョンソン
この予想結果がどうなるかは2026年5月まで待たないといけなく、成績についてはチーム状況が大きく関係することから指名チームによっても左右される。
いずれにしても「豊作」といわれる2025年ドラフトで上位指名される彼らは、今後のチームの中核とになっていくことになることは間違いないだろう。