2023-24シーズンも折り返し時期となり、2024年2月8日には今シーズンのTDL(トレード・デッドライン)を迎える。例年、TDLには多くの選手が移籍することでリーグの勢力図が変わることも少なくない。今シーズンもTDLが間近に迫り、各チームの動きが活性化し、様々な噂が飛び交っている。 完璧なチームは存在しないが、シーズン前半のチーム状況を見ながらプレーオフを目指すチームはさらなる補強を、負けが込んでいるチームは再建に向けて選手を放出する。
今回は「Bleacher Report」の記事(https://bleacherreport.com/articles/10106659-every-nba-teams-biggest-need-at-the-2024-trade-deadline)をもとに、今回はウエスタン・カンファレンス(西地区)の各チームのTDLの狙いと動きを考えていきたい。
Dallas Mavericks(ダラス マーベリックス)
補強ポイント:ペリメーター ディフェンス
ルカ・ドンチッチを中心にウェスタン上位を狙うマーベリックスだが、ドンチッチとカイリー・アービングというリーグ最強クラスのバックコートを誇っていながら怪我や、起用の一貫性のなさで上昇気流に乗れていない。
オフェンスではリーグ最高のバックコートを持っていながらディフェンス面はリーグ下位に留まっている。ルーキーのデレック・ライブリー2世やダンテ・エクサムは目覚ましいものの、プレーオフ進出を確実なものにするためにはもう1人、強力なディフェンス要員を確保したいところだ。

Denver Nuggets(デンバー・ナゲッツ)
補強ポイント:控えビッグマン
昨年王者のナゲッツは基本的には二コラ・ヨキッチとジャマール・マレーの2人が健康であれば優勝候補になりえるチームだ。ヨキッチは今シーズンもMVP級の活躍をしているが、有能な控えとして機能したブルース・ブラウンの離脱などで、昨シーズンよりもゲームに対するヨキッチの影響力が大きくなっている。
ヨキッチの控えとしてベテランのディアンドレ・ジョーダンやジーク・ナジが起用されているが、ヨキッチの負担を考えると控えセンターのグレードアップを見込みたいところだ。



Golden State Warriors(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)
補強ポイント:ディフェンダー
チームの頭脳であるドレイモンド・グリーンの離脱によって大きく順位を落としたウォリアーズだが、グリーン復帰後は勝率を上げており、現体制でのプレーオフ進出もみえてきている。しかし、強みだったディフェンスは主力の高齢化に伴って弱体化しており、チームは転換期を迎えているのは間違いない。
ボブ・マイヤーズGMがチームを去り、ジョナサン・クミンガやトレイス・ジャクソン=デイビスといった若手がチームを引っ張る試合が増えていることもあり世代交代を進めたいところだが、チームは難しい舵取りを迫られることになりそうだ。



Houston Rockets(ヒューストン・ロケッツ)
補強ポイント:スコアラー
再建期に入っていたロケッツはアルペレン・シェングンやジャバリ・スミスJr.の成長とともに躍進といえる活躍をみせており、フレッド・ヴァンブリートやディロン・ブルックスといったベテラン陣の補強もプラスに働いている。しかし、エースとして期待されていたジェイレン・グリーンは精彩を欠き、チーム全体の3P成功率を大きく押し下げてしまっていることから、グリーン放出論も囁かれ始めている。
ドラフト2位指名選手をこのタイミングで放出するのかはかなり微妙だが、勝ち筋が見えつつあるため、グリーンを放出してオールスター級のスコアラーの獲得に動いても不思議ではない。その場合はシェングンと相性が良いシューター型のスコアラーを模索することになりそうだ。



Los Angeles Clippers(ロサンゼルス・クリッパーズ)
補強ポイント:リバウンド(?)
シーズン当初は出遅れたもののカワイ・レナードが復帰し、ラッセル・ウエストブルックが6thマンとして縦横無尽の動きをしだしたことで、怪我がなければ優勝を目指せるだけのチーム状況となっている。
クリッパーズの弱点としては主力の年齢の問題と、リバウンドがオフェンス / ディフェンスともにリーグ下位になっているいることだ。しかし、イビツァ・ズバッツ、ダニエル・タイス、メイソン・プラムリーと揃っていることからリバウンド自体が弱いというよりは戦術面による可能性も高い。好調なだけに、TDLでは動かずにバイアウトのFAを狙う可能性が高そうだ。



Los Angeles Lakers(ロサンゼルス・レイカーズ)
補強ポイント:第3のスター選手
インシーズントーナメント以来、レブロン・ジェームズとアンソニー・デイビスを擁しながらレイカーズは不振に喘いでおり、プレーオフ出場も危ぶまれる状態となっている。2大エースの活躍は流石だが、それ以外の選手の波が激しく、オフェンスが嚙み合っていない場面も少なくない。
その中で、ディアンジェロ・ラッセルやオースティン・リーブスを放出して第3のスター選手を獲得するのではないかと噂されている。具体的にはデジャンテ・マレーやザック・ラビーンが挙げられているが、現実的なアセットを考えると一筋縄ではいかなそうだ。チーム全体に齟齬が生まれつつある状態であり、TDLで何かしらの動きに出る可能性は低くないだろう。



Memphis Grizzlies(メンフィス・グリズリーズ)
補強ポイント:来期に向けての調整
グリズリーズのTDLは非常に難しい。その理由は、グリズリーズはエースのジャ・モラントがいればリーグ有数のチームになるが、怪我人が多すぎて満足に戦えていない状況にあるためだ。そうした状況下でもロールプレーヤーが適切な働きでしぶとく戦えていることは称賛に値する。
しかし、TDL前にモラントと相性の良さが期待されたスティーブン・アダムズを放出して、おそらく構想外のヴィクター・オラディポとドラフト指名権を獲得していることから、ルーク・ケナードやマーカス・スマートといった需要のあるベテラン勢を放出して、来期以降に向けてビンス・ウィリアムズJr.やGGジャクソンなどの若手を育てる方向に舵を切る可能性はある。



Minnesota Timberwolves(ミネソタ・ティンバーウルブズ)
補強ポイント:控えポイントガード
ウルブズは今シーズンの躍進チームの1つであり、その起点となっているのはベテランPGのマイク・コンリーの活躍にある。昨シーズン前にドラフト指名権の多くを放出してルディ・ゴベアを獲得し、カール・アンソニー・タウンズやアンソニー・エドワーズと噛み合わせているのはコンリーのプレーメイクに依るところは大きい。事実、コンリーのオフコートではNET RTGが-7.3となっていることからも彼の影響力の高さが分かる。
逆に言うとコンリーが離脱した場合、チームが空中分解して大きく成績を下げる可能性もあるため、ウィザーズのトレ・ジョーンズなどプレーメイクに強みを持っている控えPGの獲得は必須事項となる。



New Orleans Pelicans(ニューオーリンズ・ペリカンズ)
補強ポイント:控えビッグマン
各ポジションに有望な選手を揃えているペリカンズだが、プレーオフ進出以上を見据えるとセンターのアップグレードが必要となっている。特にヨナス・ヴァランチュナスはオンコート時に数字を落としていることから、センターポジションのアップグレードが必要とされている。
ペリカンズの中心はザイオン・ウィリアムソンとブランドン・イングラムであり、彼らがいかにが自由にプレーできるスペースを作れるかが鍵となる。そのことはヴァランチュナスではなく、ラリー・ナンスJr.がセンターを務めている際に数字が上がることからも、機動力のある控えビッグマンをもう1人獲得したいところだ。



Oklahoma City Thunder(オクラホマシティ・サンダー)
補強ポイント:フロントコートのサイズ
MVP級の活躍をするシェイ・ギルジャス=アレクサンダーや急成長中のジェイレン・ウィリアムズ、新人王候補のチェット・ホルムグレンとNBAで一番勢いのあるチームであることは間違いない。
ただし、タレント豊富なバックコートと比較してフロントコートの層は薄く、アンダーサイズのビッグマンが多い。ホルムグレンもフィジカル面では心配要素があり、プレーオフでニコラ・ヨキッチやカール・アンソニー・タウンズらとマッチアップすることを考えると、ビッグマンを厚くする動きはプレーオフでの助けとなるはずだ。サンダーには豊富なドラフト指名権と高額契約のダービス・ベルターンスがおり、取引材料は十分にある。



Phoenix Suns(フェニックス・サンズ)
補強ポイント:ペリメーター・ディフェンス
オフシーズンにブラッドリー・ビールを獲得し、リーグ随一の破壊力を誇るサンズは、サンプル数が少ないがビール、デビン・ブッカー、ケビン・デュラントの3人が出場した場合は+22.6点と強力なオフェンス力を誇っている。それでもオフェンスはリーグ10位程度で、これは控えの薄さとプレーメイクに長けたPGの不在が要因と考えられる。
また、圧倒的なオフェンス力を持つスターが揃っている反面、ディフェンスはリーグ平均~下位に沈んでおり、プレーオフ進出以上の結果を求めるのであれば梃入れは不可欠だ。しかし、主力3人がサラリーキャップを圧迫するなか、サンズのTDLの動きは限られている。



Portland Trail Blazers(ポートランド・トレイルブレイザーズ)
補強ポイント:ドラフト指名権
オフシーズンにデイミアン・リラードを放出し、若手主体のチームに切り替わったこともあり、ブレイザーズは厳しいシーズンを過ごしている。ドラフト3位指名のスクート・ヘンダーソンや、2022年ドラフト7位のシェンドン・シャープらを中心としたチーム作りにシフトすると見られており、マルコム・ブログドンやジェラミ・グラントといった実力派選手たちを放出して将来のドラフト指名権に変えることは既定路線と思われている。
ブログドンやグラントといった強豪チームからの需要が高い選手を放出することで戦力がダウンすることで今シーズンのプレーオフ進出はかなり厳しくなるが、長期的なチーム再編に舵切りすることはブレイザーズにとって悪い話ではない。



Sacramento Kings(サクラメント・キングス)
補強ポイント:控えPG
昨シーズンに躍進したキングスだが、今シーズンも昨年同様の成績を残しており、プレーオフ進出を現実的な射程圏にとらえている。しかし、昨年ほどの安定感はなく、試合によって好不調の波が見えている。その要因はマリーク・モンクがハンドラーとしてプレーすることが多くなっており、それによってチームの安定感が薄れているとみられている。昨シーズン以上の結果を求めるにはチームに梃入れを行うタイミングにきているとフロント陣が考えている可能性は捨てきれない。
ディアロン・フォックス、ケビン・ハーター、キーガン・マレー、ハリソン・バーンズ、ドマンタス・サボニスらが全員出場したときは+9.5点となっており、現在の基本路線の変更は考えにくい。そう考えると、フォックスの控えでチームをコントロールできる控えPGの獲得を求めることは理に適っている。



San Antonio Spurs(サンアントニオ・スパーズ)
補強ポイント:ポイントガード
10年に1人の才能であるビクター・ウェンバンヤマをドラフト指名して新たな時代を迎えたスパーズだが前評判以上に負けが込んでおり、今シーズンのプレーオフ進出は絶望的となっている。弱点となっているのはPGで、グレッグ・ポポビッチHCはジェレミー・ソーハンをPGで起用するなどの奇策に出ることもあり、トレ・ジョーンズは中長期的構想に入っていないと思われる。
ウェンバンヤマやケルドン・ジョンソンをコントロールできる司令塔としてのPGは短期的に見ても中長期的に見ても不可欠であり、どこかのタイミングでPG獲得に動くことは間違いない。



Utah Jazz(ユタ・ジャズ)
補強ポイント:ウイング
2年前のオフに完全再建モードに切り替えたと思われたジャズだが、ラウリ・マルッカネンやコリン・セクストンの覚醒や、ケスラー・エドワーズのドラフト指名などによって2年連続プレーオフ争いを行える順位に位置している。一筋縄ではいかない選手たちが多いが、今のロスターではプレー進出を確実なものにできるほどではなく、パンチ力不足を露呈することも少なくない。
マルッカネンとエドワーズはおそらく”アンタッチャブル”だが、それ以外の選手は将来のドラフト1巡目指名権や、エース級の若手に交換される可能性は低くない。特にジョーダン・クラークソンの需要は高く、今回のTDLの目玉選手の1人になる可能性もありそうだ。


